1-05 絶対と相対の定義

「絶対」と「相対」の概念を用いる前に理解しておかなければ、思考及び議論の妨げとなります。


既存の辞書に載っている相対の定義では「全てのもの」と同義で役に立たないもので、対義語の「絶対」も矛盾して存在しません。 辞書の定義と実際に用いられている意味が乖離しているため、特有の意味を持つ定義へと改めてから扱います。


相対と絶対について、現在使われている多くの場合について、
相対的→比較的
相対性→双方向性
絶対的→断然(程度に大きな開きがある)
価値相対主義→不成立
と置き換えた方が正確に意味を表現でき、絶対と相対も特有の定義を区別して扱えます。


辞書での定義は「絶対的・何物とも比較したり置き換えたりできず、他からどんな制約も受けずそれ自体として存在する」ですが、 「他と比較できない」について、何かしらの(全体でない)ものは、そもそも全体から一部を比較して(切り抜いて)存在を 捉えているため、矛盾します。この定義では、絶対という言葉は存在しないことになります。


辞書での定義は「相対的・他との関係や比較によってそのものが成り立つこと」ですが、 認識可能な全てのもの同士は無関係とはなりません。「或る限定した条件下では成り立つ」ともなりません。 それは限定した条件以外での関係を無視するのであって、関係自体が無い(成立しない)わけではありません。 辞書での定義では全ての物事に当てはまるため、「全ての物事」と同義になります。 よって、個別の概念として役立てることができません。


選び出した定義


比べる・比較・2つ以上のものについて、何かしらの同じ点や違う点などについて区別すること
基準・準じる基・目安・何かを比べる際に、他のものと比べるために用いる比較対象・比較の出発点
基準を役立つものへと改めます。


以下は、実例から選んで役立つと判断した絶対と相対の定義です。


絶対音感・聞こえた音を音階の記憶との比較で音階を判断
相対音感・聞こえた音同士の比較で音階を判断
上記の例から絶対と相対を下記にしました。


絶対と相対は関係の捉え方(視点や観点)の基準です。 相対・比較基準が任意・比較基準を その都度変化させる⇔絶対・比較基準を定常にする


以下は用例です。


その辺を走っている車の速度は地面(地球の地表)を絶対の基準と見なして比較したものです。


左右について、 相対視点では、或る人にとっての右方向と、その他の方向を向いている人にとっての右方向は異なります。 絶対視点では最初に設定した或る視点から方向を判断します。


天体の運行について、 天動説は地球を絶対視点とし、地動説は太陽を絶対視点とします。 (厳密には、大雑把な天動説と地動説はどちらも不正確です。引力はどこまで離れてもゼロにはなりませんが、 太陽と地球の関係のみで言えば、地球と太陽の重力が釣り合うところを中心として双方が周回しています。)


相対性理論を言い換えると光速度絶対理論です。


国会議事堂の赤じゅうたんは、取り替えるときにそのとき敷いているじゅうたんの切れ端を色見本として発注するため、 取り替える度に色が少しずつ変わって行ってるらしいです(相対基準)。


絶対と相対の役立て方


自他の利害調整には絶対観点での利害の基準を作って各自が知ることが必須であり、それは実現可能です。 その内で、必要に応じて個々の相対基準を扱って利害を換算します。そのためには、それぞれの基準を正確に捉える必要があります。 言語に含まれる矛盾を無くして自己の性質と他者の性質を捉えれば、それぞれに対応する利害の基準も分かるようになります。 上記の例に示した「その辺を走っている車の速度は地面(地球の地表)を絶対の基準と見なして比較したもの。」と同じようにします。



1-04 嘘か誠か1-06 虚無主義
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